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【奄美の夕日】やっと出会えた神秘の光景 龍の目に赤い光が灯るとき(龍郷町かがんばな)
だいぶ涼しさを増した奄美の10月。突き刺さるような日差しの夏と、グレーの雲に覆われる冬と、その合間に訪れた短い心地よい季節。そのさなかで、素敵な光景に出会うことができた。
ここ数年、幾度かチャレンジしては駄目だったのだが、ようやく見ることができた。
龍郷町のかがんばなトンネルに神秘的な光がともる、あの「龍の目」である。
昨年の悲しいアタックの詳細についてはこちら↓↓↓
日刊しーま「龍の目が見たい!3日間通ってみた」
|「龍の目」に出会える場所・時間・日
場所は龍郷町円集落。地図はこちら。
奄美大島北部エリア、東シナ海を眺めながら海沿いをひた走れる、ご機嫌なドライブコースでもある。このトンネル、通称「かがんばなトンネル」は、集落の山と連なっているため、少し離れた観察ポイントから見れば、海に接するトンネル部分は頭部でトンネルが目、そこにつながる山は大きな胴体のようにも見える。

人や車はこの「目」の部分から出入りをしているというわけだ。

一年のうち、春分と秋分の前後数日。この短い2つの期間だけが、「龍の目」に出会えるチャンス。この時期だけ、日没の軌道とトンネルが重なるのである。前述の観察ポイントから見ると、日没寸前に、トンネルの上から沈んだ太陽がトンネルの穴にすっぽりと収まって見える。それはまるで、龍の目に燃えるような赤い光が灯ったように見えるのだ。
|今季のアタック
年に2回も見られる時期があるのか!と思った方。
話はそう簡単ではない。確かに見られる期間は少し幅があるが、そのすべての日で見られるわけはない。むしろ、それはまれ。
太陽は必ず沈んでくるのだが、大概は雲がかかり、トンネル内に降りてくる太陽を見ることはかなわない。
去年も、天気がよいときを狙ってアタックしたのだが、結局は海上の雲に阻まれてしまった。
(去年のアタック詳細はこちら)

▲「龍の目」観察ポイント
今季も一度車を走らせたが、無理だった。
それでもやっぱり見たい。この時期になると、このアタックがもはや風物詩的な意味合いになっていた我が家。天気がよいとそわそわしてくる。仕事や子どもの部活などさまざまな調整をはかってから、車を龍郷町円へと走らせるのだ。
|やっと見られた!そのときの思いとは…
今季2回目のアタックを敢行することとなった10月4日。
しかし、その日は息子の運動会。前日夜の仕込みからはじまり、朝早くから弁当づくり、競技にもきちんと参加して片づけまで手伝って…家に帰り着いたころには割りとヘトヘトである。
それでも、空を見上げればなかなかの龍の目日より。
とりあえず、行っておくか。
数少ないアタック可能日を逃すわけには行かないと、またしても車を走らせ、円へと向かった。
しかし、今日も無理そうだね。
ここまで来ると、もはや期待値はあまり大きくはない。
観察というよりドライブ的な気分で到着。すでにたくさんの人が集まっている。この時期は、連日観察を期待する人でにぎわうのだ。
まだ日没まで時間があったので、疲れていた私は車のなかで休憩。うとうとしていると、なにやら外が騒がしくなってきた。
もしや…!と思ってあわてて外に出ると、最高のグラデーションで夕焼けが作られ、大きな夕日がかがんばなトンネルにかかっていた。
あわててカメラを構える。

夕日が落ちる速度は、ドキドキするほどに速い。本当に、瞬きをしていたらその瞬間を見逃してしまいそうだ。
しっかりと、確実に沈んでいく。夕日がトンネルに入った・・・!!

ぽっかりとあいていた龍の目に、赤い光が充満し、それはまさに生命を宿したかのようだ。


しかし、その輝きは儚い。
すぐに光は下方していく。龍がまぶたを閉じるかのように、再び眠りにつくかのように。


|その場にいる、ということの大切さ
現代社会においては、もはやその場にいなくとも大概のことは見て、知ることができる。
龍の目に関しても、これまでその写真はたくさん見てきたし、さがせば動画もあるだろう。
けれど、その場に赴いて見て得た体験は、想像していたよりも、多くを私のなかに刻んだ。

これほど神秘的だとは思っていなかったし、
これほど自分が感動するとは思ってもみなかった。
「体験」することの大切さを再実感。
まだまだ知らない島の美しさが山ほどある。
(日刊しーま編集部 麓 卑弥呼)